逐語録、どこを読めばいいのか分からないとき — 3つの視点で読む実技試験の振り返り
せっかく作った逐語録が、うまく使えない
養成講座で「逐語録を取りましょう」と言われたことがある方は多いと思います。録音して、何時間もかけて書き起こして、ようやく文字にする。最近はAIの文字起こしツールを使える場面も増えてきましたが、それでも確認や修正にはそれなりの手間がかかります。
で、できあがった逐語録を前にして——どこから手をつければいいのか分からない。
文字量に圧倒される。最初から読んでみたけれど、何が良くて何が良くなかったのかがよく分からない。全体をざっと眺めて、「うーん、なんとなく質問が多かったかな」くらいの感想で終わってしまう。
あれだけ時間をかけて用意したのに、それをうまく活かせている実感がない。どこか消化不良のまま、次の練習に進んでしまう。そんな経験に心当たりがある方は、少なくないのではないでしょうか。
「話しているとき」には見えないものがある
逐語録の価値は、面談をもう一度追体験することではなく、面談の外側から眺められることにあります。
話しているときの自分は、対話の流れの中にいます。相談者の言葉を受けて、次に何を言うかを考えて、相手の反応を見て——その連続の中では、自分がどんな言葉を選んでいたか、相談者の表現にどう反応していたかは、意外と記憶に残りません。また、そんなやりとりを客観的に捉えるのもなかなか難しいものです。
逐語録はその「流れの中にいた自分」を、文字として外に取り出してくれます。面談の中にいた自分と、今それを読んでいる自分は、違う場所に立っている。この距離があるからこそ、話しているときには気づけなかったことが見えてきます。
ただ、その「見えてくる」ためには、少しだけ読み方の視点があると助けになります。
「全部を読む」より「3つの視点」で読む
逐語録を最初から最後まで通して読むと、漠然とした印象しか残らないことが多いです。量が多い分、どこに注意を向ければいいか意識が散ってしまう。
すべてを精読する必要はありません。以下の3つの視点で眺めてみると、見えてくるものが変わります。
① 自分と相談者、どちらが多く話しているか
ざっくりとした発話の分量を見ます。文字数で厳密に測る必要はなく、ぱっと見て「自分の発話ブロックのほうが大きいな」「相談者の発話が短いな」ということに気づけるだけで手がかりになります。
自分の発話が多い場合、質問を重ねすぎているか、説明や助言が入っている可能性がある。相談者の発話が短い場合、もう少し掘り下げる余地が残っていたかもしれない。
② 自分の発話は「質問」が多いか「応答」が多いか
自分の発話だけを拾い読みしてみます。「〜ですか?」が続いていたら、質問中心の面談になっている可能性があります。一方で、「〜ということなんですね」「〜と感じていらっしゃったんですね」のような、相談者の言葉を受けて返している発話がどのくらいあるか。
質問が多いと、相談者は「聞かれたから答える」モードに入りやすくなります。応答——相手の言葉を受け止めて返す言葉——が入っていると、相談者の側に「聴いてもらえている」という感覚が生まれやすくなります。
③ 自分は「感情の言葉」と「事実の言葉」、どちらに反応しているか
相談者の発話には、感情の言葉(「不安で」「辛くて」「悔しい」)と事実の言葉(「異動になって」「3年目で」)が混在しています。「なんか……」「うーん……」のような言い淀みや沈黙も、感情が動いているサインであることがあります。
その前後の自分の発話を見てみます。感情に触れているか、それとも事実の確認や次の質問に移っているか。事実を追う発話が続いているとき、相談者の感情が置き去りになっていることがあります。ここに、面談の質が表れやすい場所があります。
まずは1箇所だけ、深く読んでみる
3つの視点すべてを一度にやろうとすると、それはそれで大変です。最初は1つの場面だけで構いません。
たとえば、面談の中盤で相談者が少し黙った場面を見つけて、その前後3〜4発話を読み返してみる。相談者は黙る前に何を話していたか。自分は何を言ったか。黙った後、自分はどう動いたか。
この小さな振り返りの中に、自分の癖や傾向のヒントが見つかることがあります。全体をざっと読むより、1箇所を丁寧に読む方が、気づきの密度は高いことが多いです。
逐語録を「手に入れる」選択肢
逐語録の読み方が分かっても、そもそも手元に逐語録がなければ始まりません。
自分で録音して書き起こす方法は、手間はかかりますが、書き起こす過程そのものが振り返りになるという面もあります。文字にしながら「ここでこう言ったのか」と気づくことは少なくない。
一方で、AIサービスを使うと自動で逐語録が残るものもあります。書き起こしの負担がなくなる分、「読む」「振り返る」という本来やりたいことにエネルギーを集中できます。
どちらにも良さがあるので、自分の状況に合う方法を選ぶのが良いと思います。
おわりに
逐語録を読んで「自分はここが弱いのかもしれない」と気づく瞬間は、少しきつい面もあります。練習中にはなんとなくやり過ごせていたことが、文字になると目の前に残るからです。
でも、その気づきこそが、次の練習で何を意識するかを変えてくれます。「漠然と練習する」から「自分の課題を知った上で練習する」への転換は、逐語録を読むことから始まることも多いです。
自分がどこで詰まりやすいのか、課題のパターンが気になった方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。
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